Funky Freshin'

日々リリースされる膨大なHip Hop / R&Bの海に溺れながら音源を紹介していきます

いまだに3月を引っ張っていますし、もはやタイトルの一貫性も速報性も皆無のブログになってきましたが気にせずいきます。 3月にリリースされたR&B作品のまとめです。これまでの記事でもR&Bモノはちょいちょい取り上げていますので、それ以外の作品から。

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マイアミの男性3人組であるGold SpexのデビューEPとなる"Refraction"。シンガーのJason CaesarとプロデューサーのAustin Leeds、ATMという変則的な編成のトリオです。ちょっとめぼしい情報がないか掘ってみたところ、Soundcloudにソロとしての音源がありました(残念ながらATMに関しては見つけられず)。Jason Caesarは、今っぽいファルセットを効かせた透明感のある声質で、ビートもメインストリームR&Bモノを中心に、アコースティック音源まで幅広くチャレンジしているようです。対して、ビートメイカーのAustin Leedsについては意外で、ソロ作ではプログレハウスであったりEDM系のエレクトロな四つ打ちの作品がほとんどでした。
そんな彼らが出会ったのがこのGold Spexになるわけですが、そういった前段を踏まえて聴くとある種予想通りともいえる、オルタナ系R&Bのサウンドとしての着地をしています。
かなりテンポを落とし、ダークな雰囲気からフック明けの間奏で情景がガラっと変わる02. Colorblind、Jason Caesarのギターを取り入れた(?)、彼らなりの折衷案的な音に仕上がった07. Prayer VIなどは面白い楽曲になっています。
他の作品も四つ打ちは多めですが、Austin Leedsの持つバンギンでエモいメロ…といったトーンはグッと抑えめで、彼としても新しい境地へのチャレンジになっているのかもしれません。もしかするとATMが裏でディレクションしているのでは…などと想像してみます。


お次はトロントからテキサスにベースを移したシンガー、Tory Lanezの最新となるミクステ、"Chinxtape 2"。2011年に発表した1作目、去年発表した"Conflicts Of My Soul"に続いての作品となります。ラップもすればほとんどの曲を彼自身が手がけてしまう器用なシンガーで、特に今作は彼の経歴も色濃く反映された秀作になっています。テキサスといえば言わずと知れたスクリューのメッカですが、本作ではこのスクリューが非常に効果的に取り入れられています。 
90年代R&Bのサンプリングを大胆にスクリューさせ、うなるようなコーラスとベースの音の線を繊細な彼の声が辿っていく05. All That、カントリー系のネタをスクリューどころか逆回転させて独特のグルーヴを産みだした06. Crewなど、テキサスという土地に色濃く影響を受けた手法でビートメイクをしていきます。
一方で彼の歌声は、現行R&Bのメッカであるトロントをしっかりとベースにしたエモーショナルな歌唱でしっとりと聴かせてくることで、2つの土地からの影響を見事に消化しています。
また、05. All That以外にも随所で90年代R&Bのサンプリングが見られ、Brandy&MonicaやTLC、Ginuwineといったメンツの往年の名曲を使うなど、今ジワりと流行中の90年代オマージュも忘れておらず、押さえるところは押さえた、そんな作品です。
 

3つ目はカリフォルニアの新鋭シンガー、Boxxxのデビュー作である"XTC"。あまり情報が得られなかったず、本作で知り得るものが現状は全てです。こちらもTory Lanezと同様にセルフ・プロデュースな楽曲が多いですが、サウンド的には良くも悪くもベイエリアっぽい音数少なめなものが多いです。ただ音の選び方が悪いのか、チープな風に聴こえてしまう楽曲もいくつかあり、そこは残念でした。ちなみに本作には88-KeysやFuturistiksがプロデューサーとして参加しているのですが、そちらは安定のクオリティです。だからちょっとチープな感じが目立った面もあるかと。
ギターの綺麗なメロディのリフの重なりとフィンガースナップの間が心地よい04. Stuck ft. YeahDatt、ベッドサイドR&Bとしての機能性に長けたその名もズバリな07. Favorite Position ft. TeeFii (TeeFiiの客演もナイス)あたりがハイライトでしょうか。どちらもBoxxxプロデュースな作品ではないところを察してください。


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お次は、Wiz Khalifa擁するTaylor Gangの紅一点Courtney Nicolleのデビュー作となる"Love On The Run"。レーベルと同じピッツバーグ出身のシンガーで、ジャケからはBadな雰囲気も醸しだされていますが、これがなかなか正統派R&Bな作品でした。
Jhene AikoやSZAといったあたりがすっかり道を築き上げた感のある、アンビエントで繊細な歌声とTrap色強めのビートを上手くミックスさせ、チル感を高めながらR&Bとしても消化できるラインの曲を器用にこなしていっています。
今の女性側のR&Bの流行としてこういった志向は広まってきてはいますが、LAビートシーンに寄ってみたり試行錯誤を重ねている印象です。そこに来て本作はしっかりとR&Bであり、足場が固い作品だなぁという思いを抱きました。客演に参加しているレーベルメイトのTy Dolla $ign、Chevy WoodsやJuicy J、そしてWiz Khalifaといった面々がグッとHip Hop側に引き寄せている力をそれぞれが発揮していることが影響しているのかも。
Terrace Martinがプロデュースしている09. You Got Me ft. Wiz Khalifa、Ty Dolla $ignが良い感じにエロい06. Just Fuckin ft. Ty Dolla $ign (Aaliyahの"One In A Million"がサンプリングされていたり)あたりが聴きどころかと。
この路線も良いのですが、個人的にはもう少しメイン寄りと言うか、Hip Hop Soulの要素を意識した彼女のサウンドを聴いてみたいなとも思います。結構ハマる気がするんですけどねー。


そんな僕のHip Hop Soul欲求を満たしてくれた作品をBandcampから。ニューヨークを拠点に活動するシンガー、Summer Williamsの新作となるEP、"Call Me The Soulstress"。レーベルとは特にサインをしていない、本当のインディシーンで活動を続けているようなのですが、一聴してどハマりしてしまうくらいにド直球に大好きな系統のサウンドでした。
Chrisette MicheleやJill Scottあたりが好きなかたなら絶対に聴き逃せないような、王道Hip Hop Soulの真ん中を歩くような声質とサウンドで、しかも(おそらく)彼女がビートメイクも手がけているようで、なおさら応援してしまいたくなります。
90年代Hip Hopのローファイなビートとドゥー・ワップ感あるコーラスとの絡みがたまらない01. Creep、昔のKanye Westがやりそうなピアノのシンプルなカットがタイトでカッコ良い04. Chasing You, Chasing Me、一転してガクっとテンポを落としてチルな雰囲気で聴かせる05. The Real Thingなどなど、聴くべきポイントは非常に多いです。
2012年にはその名も"Boom Bop Soul Vol.1"というEPを発表しており、こちらもその名に恥じない高いクオリティの音を作っています("Good Good Love"とか本当にたまらない)。タイミングやその時の流行りなんかもありますし、ブレイクするかどうかは誰にもわからないところはありますが、彼女のような真っ当なシンガーが真っ当な評価を得られるようなシーンがあればなぁとは思います。


最後もBandcampから。こちらは3月発表の作品ではないのですが、今日たまたま名前を見かけて思い出したので取り上げます。ロンドンのシンガー、Ego Ella Mayの最新となるEP、"Breathing Underwater"。思い出したきっかえとなったのは、日本でも名前が広がり始めたIAMNOBODIの新曲に参加した、というニュース。まぁこの曲を聴いてもらえれば何となく彼女の雰囲気が把握できるかと思います。
R&B、というよりかはネオ・ソウルの系譜の上に立つEgo Ella Mayですが、本作もビートとビートの間をアンバランスに埋めていくような作品になっています。Erykah Badu直系といえばそれまでですが、それだけではない、そんな印象のEPです。
彼女も2013年に"The Tree"というEPを発表していますが、こちらのほうが、よりフワフワした浮遊感のあるトラックが多く、彼女の持つ不思議な魅力あるボーカルを堪能することができると思います。

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